自社の”お客様”のこと、どれくらい把握していますか?
お客様がなぜ自社を選んだのか?そこにたどり着くには、どのようなプロセスがあったのか?それらを深掘りしていくと「顧客像」がくっきり見えてきて、ビジネスのヒントが沢山出てきます。
今回は、マーケティング・ブランディングの初期ステップの一つである「リサーチ」をピックアップします。マーケティングにおけるリサーチとは、顧客の情報を収集・分析すること。様々なリサーチ方法がありますが、目的や状況に応じて選択していくことになります。
まず、リサーチの分類である「定量調査」「定性調査」という用語からおさえていきましょう。
リサーチ
定量調査
結果が数値で表される
定性調査
結果が言葉で表される
定量調査は主にWebアンケートや郵送アンケートが該当します。結果が客観的な数値となって出てくるので、認知度・満足度を数値で出す場合や、傾向を量的に分析したい場合に用いられます。
一方で、定性調査は顧客に直接話を聞くインタビューが該当します。インタビューは、1対1の「デプスインタビュー」と、複数名に対して行う「グループインタビュー」があり、状況に応じて最適な方を選択して実施します。話を深堀りしていくことができるので、背景や原因を探ったり、数値では表すことができない顧客の心理に迫ったりすることが可能です。
リアルな声を聴きに行く
不動産・リフォーム業の場合、色々な角度からの”意見”を集めたい時は「グループインタビュー」が適しています。一方で、顧客の価値観や行動背景に迫るには「デプスインタビュー」が良いでしょう。「デプスインタビュー」は、60分~90分程度の時間を掛けて1対1で向き合うので、本音を引き出しやすく、お金・健康・仕事・教育・家族関係など、プライベートに踏み込んだ話もしやすいというメリットがあります。もし、顧客へのアンケートを行ったことがなければ、ぜひ一度実施してみることをおすすめします。”誰”に対して商品・サービスを提供しているのか、ターゲットの設定に役立つほか、自社の強み・弱みや、市場での立ち位置などクリアになることも多々あります。また、顧客の課題が見えれば、その解決に目を向けることで、自社の商品・サービスの価値を高めることもできます。
中でも、リアルな声を聴きに行く1対1の「デプスインタビュー」は、顧客の価値観や行動背景を深く知ることができる手法です。
フロー1/対象者を選出する
デプスインタビューは1対1で話すため、誰に話を伺うかがとても重要です。設定した条件に合うかどうかをしっかりと見定めましょう。対象者は会員の中から募る方法や、簡単なWebアンケートを行い、もっと詳しくお聞きするためめということで、1対1でのインタビューに参加してくれる方を募る方法もあります。
フロー2/仮説を立てる
インタビューは、やみくもに話を聴くわけではありません。あらかじめ目的に沿った仮説を立て、それをインタビューを通して検証していきます。
架空のリフォーム会社を例に考えると、
● 課題
他社との間で差別化が出来ていない
● インタビューの目的
差別化のための施策検討の参考にしたい
● 仮説
コストパフォーマンスが良い点を十分に訴求できていないのではないか?
インタビューを通して仮説を検証する際には、仮説が合っているならば「なぜ?」「どんな点が?」がなど、具体的に深掘りしていきますし、仮説が合っていなかったら、話しながら新しい仮説を立て、新しい発見がないか考えていきます。
例えば、このケースだと、コストパフォーマンスの良さには満足しているが、満足ポイントを深掘りしていくと、「こんな方法もあります」など、コストパフォーマンスの良さと、理想の実現のバランスを考えて提案してくれた担当者への満足度が高いことが分かるかもしれません。その場合の施策は、コストパフォーマンスの良さを打ち出すのではなく、「人」を切り口とした販促も一つの手です。
フロー3/インタビュー項目シートをつくる
事前にインタビュー項目を決めておくのはもちろんですが、必ず聞きたい項目を決めて、優先順位をつけておくのがおすすめです。つい話が盛り上がってしまった時も、優先事項の高い項目をおさえておけば、その後「少し話が戻るのですが・・・」と、遡って詳しく質問をすることもできます。
フロー4/当日は趣旨説明と自己紹介から
当日は、時間を取っていただいたお礼の後、「本日は●●のために●●のお話を伺わせていただきます。お時間は、●分程度を考えています。」など、趣旨や所要時間を最初にお伝えします。もちろん事前の段階でお伝えしているはずですが、念のため現地でも確認するようにしています。
次に簡単な自己紹介をします。見ず知らずの相手にプライベートのことを話すのは、誰でも気構えてしまうもの。最初にインタビュアーの方から自己開示することで、堅い空気感を緩めていきます。共通点が見つかれば、なお良し。親近感を持ってもらうことで、より話していただきやすくなります。その後は、あらかじめ作成しているシートに沿って話を伺っていきます。
フロー5/オープンクエスチョンの使い方に注意して進める
インタビューは「Yes/No」で答えられる「クローズドクエスチョン」ではなく、文章で回答する「オープンクエスチョン」で進めていきますが、「それはどうしてですか?」「どのようなところが良いですか?」などを繰り返していくと、問い詰められているような気持ちになることもあります。まず最初は、簡単に答えられる「クローズドクエスチョン」から始め、徐々に具体的な質問にシフトしていくと、自然な流れで話してもらいやすくなります。
また、「その部分が興味深いので、詳しく伺ってもよいですか?」と言い方を変えてみたり、「ちょっと話を変えて・・・」など、質問のフレーズをいくつか持っておくと、”問い詰め感”が和らぎます。
フロー6/最後の締めはこの2つで
終盤に必ずと言ってよいほど伺っていることが2つあります。まず1つは「お客様にとって●●とはなんですか?」といった、インタビュー全体を統括するような質問。「漠然としていて難しい質問かもしれませんが」という前置きもお伝えした上で、あえて答えが難しいような質問を入れるのには、その答えが価値観を反映していたりするからです。もちろん、答えに詰まっている様子であれば、無理にお願いする必要はありませんが、聞いてみて損はない質問だと思います。
そして最後に、自社の商品・サービスにご不満はないでしょうか?ここは、こうした方がよいという点はないでしょうか?というお伺いです。話も終盤になると、本音が出やすくなっているので、少し引っかかっていたことなどをお話しして下さったりします。不満を吐き出していただくことで、商品・サービスへの満足度向上につながります。
1対1の「デプスインタビュー」は、マーケティングリサーチの中でも、最もリアルな声を集めることができる手法です。ただ、1人の個人的な意見なので、ターゲットを代表するものではなく、偏った意見になってしまうこともあります。ある程度の件数を実施する必要があり、時間と手間が掛かるのがデメリットとして挙げられます。
しかしながら、適切な件数のインタビューを行い、伺った話をグルーピングしていくと、行動背景や価値観に共通点が見えてきて、自社の”お客様像”の解像度が上がっていきます。また、事業展開のヒントとなる言葉を得られることも多々あります。課題の解決は、『お客様と直接対話する』という視点を切り口にしてみてはいかがでしょうか。